記事

記事

安さんの鉄博通信 >> No.13 鉄道模型ジオラマの秘密

鉄道模型ジオラマの秘密

相変わらず人気のアトラクションで、来館のお目当ての一つでもある鉄道模型ジオラマですが、定時の解説付ショウ以外にも自由解放の時間があり、自動運転の様子が楽しめます。
   模型はレール巾16.5ミリのいわゆるHOゲージで、車体は縮尺80分の1サイズです。本来ならばレール巾の広い新幹線車両も、同じレールを走行させるため新幹線型は縮尺87分の1のサイズになっています。
   ジオラマ室と海底トンネル(通称)で結ばれたバックヤード(車両基地)もガラス越しに見学出来ますので熱心な模型フアンが絶えません。今回は車両基地を支えるスタッフに取材した裏話もご紹介します。次にご来館の際はそんな予備知識も含めて安定した走行をご堪能下さい。

お化けの機関車

列車の先頭にたって颯爽と走る機関車は、模型でも力持ちの頼もしい存在に見えます。ところがどっこい ! 当ジオラマの機関車はモーターを持たない無動力車(お化け)なのです。個人の模型では考えられないことです。安定した加速と走行をお客様に見せることが最優先ですから、複数の車両(客車、貨車)にモーターを分散取付けしてあります。従って先頭の機関車は飾りで良いのです。
   長い編成を逆方向に走らせる時でも機関車一両だけを付け替えれば済むという利点も有ります。(ただしこれは一旦バックヤードに列車を戻してから行います。)

車両の細部(ディテイル)は簡略化しています

車両の細かいパーツや塗装、標記(文字や番号などのレタリング)は精密な鉄道模型の重要な要素です。愛好家の皆さんが出来ばえを食入る様に眺めて満足するポイントです。ところが当ジオラマでは個々の車両の鑑賞ではなく、離れた位置から全体の情景とその中を走行する姿を眺めるのが目的ですから、フル編成(10両、16両など)を忠実に再現し主電源を貫通させるなど、走行機能と編成美を大切に考えています。細部の工作や仕上げにはこだわらない業務用のモデルです。

一日の走行距離4000メートルの編成も

長さ25メートルあまりのレイアウト室ですので、レールの一周は50メートルもあります。
   数十本のレールが敷かれていますのでレールの全長は実寸で約1400メートルに及びます。頻繁に登場する編成は1日の走行距離が4000メートルにも達します。これを実車に換算するため80倍すると実に320キロメートルの距離に相当します。これは本物にひけをとりません。間違ってもトラブルが発生しない様、毎日入念な調整をしています。

車軸と軸受けの改造

個人で楽しむ模型車両が一年間に何回走行するでしょうか、延べ何メートル走行するでしょうか。
   走行距離が何百倍、何千倍におよぶ車両たちですから回転部分の耐久性に特別の工夫がされています。市販品の車軸は先端の尖った部分を台車側の窪みに差し込んであるだけの点接触ですから、長時間の運転はできません。ジオラマの車両は車軸が先まで伸びたプレーン式に交換してあります。軸受けでしっかりと支持してあっても先端がおむすび型に編磨耗することがあります。
   潤滑の工夫やモーターの交換は勿論のことです。

特別列車の運転

まもなく夏休み期間になります。ジオラマの鉄道でも臨時の特別列車を計画しています。
   戦後まもないころからの歴史的な列車にスポットをあて、第一陣は東海道線の特急列車「へいわ号」となるようです。EF55形式電気機関車の牽く旧型鋼体客車の編成で、展望車ほか一部の車両はモニタールーフ(二段屋根)式で登場するそうです。もちろん機関車はお化けです。
   運転は8月からになりそうですがお楽しみに。

開館時間の一時延長のお知らせ

週末の延べ4日間の試みで、7月31日(金) 8月1日(土) 8月7日(金) 8月8日(土)は夜8時まで開館することになりました。お仕事の後でもゆっくりご来館いただけます。もちろんジオラマもご覧になれます。その他の詳細は鉄道博物館のホームページをご参照下さい。

2009/7/15   鉄道博物館ボランティア   安川彰一