すでに“古い話”になってしまったが、3月に行われた第1回WBCにおいて日本が初代チャンピオンとなり多くの国民が盛り上がった。おそらく球技における世界規模の大会でトップレベルの選手たちのガチンコ勝負で日本が金メダルを獲得したのは初めてと言えよう。そのWBCのあとだからこそ、皆さんに是非読んでいただきたい書籍を紹介したい。本書により「サッカーにはワールドカップがあり、野球にはなぜ無かったのか」そして「サッカーはワールドカップなのに、野球はなぜWBCとなったのか」が理解できる。
書籍のタイトルは「サッカーで燃える国 野球で儲ける国」(ダイヤモンド社刊)である。著者はイギリス在住とアメリカ在住のスポーツビジネスに詳しい2人の経済学者で、サッカーと野球のスポーツ文化の歴史や特徴を紹介するとともに2つのスポーツの政治や経済という分野からも分析している興味深い内容となっている。
内容を紹介すると多くのスポーツファンが長年思っていた疑問、一つは「イギリスで始まったサッカーはなぜ世界中に広まり、アメリカで始まった野球は世界的に普及しなかったのか」、そして「サッカーに比べて野球の方が儲かるのか」という疑問に答えている。
最初の疑問については、サッカーと野球が誕生した時代に世界経済の中心であったのがアメリカではなくイギリスであったこと、国際化についてはイギリスのサッカー関係者は長旅もいとわず国際遠征ツアーやイギリス人の海外在住者が熱心であったことが要因となっており、野球関係者はそうでなかったなど両国の歴史や文化の違いについても触れている。
また一般的となっているMLBでも日本でも野球は儲からないものという説について、意外にもMLBでの多くの証拠をあげて儲かっているとしている。また野球はMLBを頂点に独占的な組織で運営されているため儲かるシステムとなっており、サッカーは反対に競争的でチーム間の競争が熾烈で昇格・降格というシステムがインセンティブと一方では財政的困難を生み出しているおり、儲からないという説である。
本書の結論として「サッカーは野球に学べ、野球はサッカーに学べ」と言っている。日本にあてはめると「日本プロ野球はJリーグに学べ」ということになろうが、日本の場合その前にやらなければならないことが多々あるような気がする。
さてMLBファンとして日本の多くのスポーツジャーナリズムのように「松井が打った、イチローが走った」ということだけでMLBを楽しむのは些かもったいない。歴史や文化、そして現実問題としてビジネスとしてMLBの側面など是非知っていただきたいと思う。そのためにも本書は読み物としても堪能できるものである。是非ご一読を進めたい。
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